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9月3日、体調不良の記録

さて、今日も日記を記すぞ、とパソコンに向かったのが金曜の夜、0時を回るか回らないかの頃。その日は朝7時から働いて、昼からは健康診断、大きなクリニックで体のあちこちを検査してもらってからハンバーグを食べ、少し歩いてから水族館へ赴き、その後は仕事の買い物をちょっとしてからここ最近のおでかけの定番となっているネットカフェへ足を伸ばしてしこたま漫画を読み、電車とバスに揺られて部屋に着いたのが23時頃。健康診断はまるで何か機械の部品になってベルトコンベアーに運ばれているような心持ちだっただとか、水族館でまた新しい生物へのときめきを発見して心が躍っただとか、書きたいことがいろいろあるなあ、と思いながら軽い夕飯とシャワーを済ませてさて、と思ったのもつかの間うとうととして、テーブルにつっぷして十数分。足が多いに痺れてしまってこらたまらん、と思いながら後ろにひっくりかえって痺れを解消している間に意識が飛んで目覚めたら夜更けと早朝の境目だった。頭は濡れ服も着ず扇風機に煽られていたことや、お酒を飲んでDVDを見るという週末の楽しみローテーションを逃したことを悔いながら髪を乾かして布団に入ったのが午前5時。次に目覚めたのは午前8時頃、テレビに出ている人と一緒に短いPR映像に出演するぞ、という収録中の夢を見ている最中、頭でなく体に起こされたのだった。

 

お腹が痛い。のろのろと布団を這い出して立ち上がる。でもいつもの腹痛と違うから、これは生理が来たのではないか。のろのろと便座に腰掛ける。昨晩遅くに軽くうどんだけ食べたものの、お腹は鳴るほど空いていて、また眠気はまだまだ醒める様子もなくて、だから余計と痛みが増すのだと思った。出してしまえば楽になるのだけれど、一向に出る気配はなく、しかし痛みは下腹部をぐるぐる回ってじくじくと体と頭を攻撃する。くらくらと頭が回り、吐き気が込み上げてきたあたりでこれはおかしいな、と思う。生理痛だと思ったけれど赤いものはこちらもまた一向に出てくる気配がない。痛い、痛い、うう、ああ、と言葉と言葉以外を呻き放ちながら腹を擦り、しかし体を支える力がどんどん抜けていく。支えきれない頭を壁に付けたり背中を便器の蓋にもたれかけたり、するんだけどするほどに吐き気が増幅、手足もじんじんと痺れ始めた。頭の中で何か大きなゆっくりとした竜巻がぐわんぐわんと回って私の体ごと巻き上げて行くようで、それでも何とかかんとか排出をして、トイレットペーパーへ伸ばす手もうまく動かずの状態、必死に紙を巻き付ける。今このまま倒れてしまえば今日はお休みで誰と会う予定もなくて月曜日に私が出勤してこないぞと職場から連絡が来るまでは何もかも発覚しないし第一ぐちゃぐちゃのこの状態を誰かに見られることなぞ考えただけで吐き気がする、というか実際吐きそうなんだけど、と早口の誰かが頭の中でしゃべっていた。意識が朦朧とする、という表現を、今ばかりは当てはめても良いだろう、と許可を出し、そんな場合ではない吐き気に今度は上からの排出のスタンバイに着くがこちらは何も出ず、これは何だろう何だろう考えられるのは何だろう、暑さ、水分、とにかく水分を摂らねばならないと、やっとのことで立ち上がり廊下に出る。手足が震え、支えがないと歩けない。水をがぶがぶと3杯ほど飲む。腹痛、吐き気、痺れ、眩暈、いずれもまだ緩和もされず常に四方から体に襲い掛かってきていて、その隙を見計らって鎮痛剤を喉に流した。これでひとまずなんとかなるだろう、なんとかなっておくれ、と祈りながらまたトイレに向かい、また排出をし、痛い、痛い、ああ、うう、と呻き放ちながら深呼吸をしてみたらすう、と気が楽になった気がして、焦らないように焦らないようにと自分に言い聞かせながらゆっくりと深呼吸を繰り返す。そうしているうちに眩暈と吐き気は随分とおさまってきて、腹痛にもひと段落がついたので廊下をずり、ずりと歩きまた水をがぶがぶと飲んで布団に倒れ込む。横になっていると薬が体中に行き渡るようなイメージがして、ようしそのまま、鎮まりたまえ、鎮まりたまえ…と頭で唱えて大きな呼吸を続けていくうちに突発的な症状は沈静化して、その代わり起き上がる力がなくなった。これはしょうがない、とひとり生き残った眠気に飲み込まれるがまま瞼を下ろした。

 

眠れはしなかった、ただ目を開けたり閉じたり、体を横にしたり仰向けにしたり、テレビを付けたり消したり。この症状は一体なんなのか、調べようにも体を起こしてパソコンまで辿り着けないので諦めて横たわったまま日常と昨日との間違い探しをしていた。健康診断。これが一番、違うこと。採血の時、これまで採血で気分が悪くなったことは?と聞かれた。ありません、と答えて左肘の内側の青い血管からゴクゴク流れ出ていく血を凝視していた、随分前に献血をした時には自分の血はこんなにも赤黒い赤なのか、と衝撃を受けたが、この日の血液は想像していたより随分赤に近く、また針を刺しただけでこんなにも勢いよく体外へ飛び出して行くものなのか、血は、となにやらざわめいた気持ちになった。あるいは、婦人科健診。緊張と自尊心に揺れながら検査をされ、ながら痛みを感じていないようにふるまうのは以前の婦人科健診で自尊心を大いに傷つけられたため。中と外から腹部を強く押された時には思わず痛い、と叫びそうになったけれど押し黙った末、今回は何も言われなかったからこれは勝ちである、と勝ち負けのつかないフィールドにそれを持ちだして意味もなくかざしてみたり。しかしその後トイレにて少しの出血を見つけてとてもショックを受けた。あるいは服を着ないで濡れた頭で何時間も扇風機の風邪を浴びていたこと。しかし風邪の症状はこれといってなく、むしろ金曜の昼までこほん、こほんと僅かにくすぶっていた風邪の前兆のような咳は収まっていた。それでは、昨日食べた物というのはどうだっただろうか。朝にはご飯と豆腐。昼過ぎにファミレスのハンバーグセット。食べ放題のスープを一杯。夜にはネットカフェのソフトクリームをたくさんと、いろんな種類のスープとジュースをせわしなく飲み続けた。そして部屋に戻ってからのいなりうどん。当たりそうなものはどこにもないけれど、いつもと違うのはファミレスくらい。ネットカフェは良くそんな風にして利用していたから違うんでないか、でも体調によっては何かが起こるのだろうか。いつもと違う部分はあるけれど、これ、というほどの心当たりはなかった。

 

窓からの光がとっくに世界は朝であるよ、と教えてくれるそれを無視し続けて文字通りゴロゴロと過ごして時計を見遣れば13時。体を起こしてみると、まだ眩暈と手足の痺れは残るものの他の症状は随分と良くなり、立ち上がることもできたのだった。腹が減っている。胃は可哀想なくらいきゅうきゅうと音を立てて訴えているのだけれど、どうにもこうにも、食べる気が起きない。例えば風邪を引いたりしても食欲がなくなるなんてことはこれまで生きてきた時間の中でほんの1、2回しか記憶していないというほどに食欲に貪欲な私なので食欲がなくなるなんてことがこれは只事ではない、と自分に警告するのであって、それでも腹が減って苦しい、と、思いついたのは冷凍庫に残っていた棒状のバニラアイスで、箱入り8本パックのそれは空腹を満たすにはとても足りないボリューム感だったけれど何かを食べることができた、という安心感を与えてくれた。おかげでもう少し食べてみよう、とお茶漬けを食すこともできた。いつかどこかでもこんな、もうどうしようもない状態に陥ったことがあった、と思い当たった記憶は中学生のころ。確か家で過ごしていて、腹痛、吐き気、眩暈、そう、同じだった。歩けずにトイレへ這って向かって、便器に縋るように内容物を吐き出した。トイレの前で力尽きて転がっている私を母が見つけて叔母が車を出して病院へ連れて行ってくれた。カーテンで仕切られた、病室ではない簡易個室のようなところのベッドに寝かされて、確かカーテンはくすんだピンク色、シーツと枕は真っ白で、看護師さんの制服も真っ白。お医者さんから何やらいろいろ、聞かれた、妊娠してるかまっさきに聞かれて即答をして、腕に針を刺されたあの時痛みは感じなかったような気がするけれど、そうやって点滴を打たれて、しばらくすると姉や母が傍らに現れた気がする。何時間かそうした後に起き上がってお医者さんの話を聞いたけれど、どうにも「原因がわかりませんねえ」と首をひねっただけで、対策もお薬も何もないままに家へと送り帰されたのがその時の記憶のすべて。実際その後同じような状態になったことは一度もなかったのだった、金曜日まで。あの時だ、あれと同じだ。そう思って母にメールをする。母も一緒に話を聞いていたから、私の記憶から抜けている医者の言葉を覚えているかもしれないと、しかし母からの返信は私の記憶にない私の体調不良の記憶であって、自分で健康なつもりでいたけれどそういえば怪我や体調不良で幾度となく迷惑を掛けていた娘であったことを思い知るのであった。その電話でやりとりをして思い出した母もやはり、原因はわからないと言われた、だから今回の原因もわかるわけはなく、とりあえず様子を見ながら安静にするよ、と電話を切った。

 

トイレへ行き、寝て、起きて、水分を摂って、を繰り返すと夕方にはまた一段階回復をしたように思えたので、洗濯と軽く掃除をする。それもクリアした、から今度は顔を洗って着替えて外へ出る。近所へ買い物に行くくらいはできそうだ、と、買い物メモを見ながらあちこちへ回る。買い物に出ると買う予定のもの以外がやけに目に入ってあっちこっち寄り道をして予定時間の倍はかかる、というのが恒例で、今日は抑えめにしよう、と思いつつやっぱりあっちこっちへ「お得」な出会いを求めて歩き回る。と、途中店内のお菓子コーナーの傍で一瞬バランスを崩しそうになって、眩暈の欠片はまだまだ体から抜けておらず、やはり今日は退散だ、とバスに揺られて帰る。横になって録画した番組の編集をしていても、仰向けになって活字を追っていても、いつの間にか眠りに落ちているのでこれはまたしょうがないな、と諦めて眠り、起き、水分を摂り。買ってきたゼリーでカロリーが摂れます飲料を流し込むけど空腹はあまり満たされなかった。食欲は相変わらず無く、しかしどうにかガツンとした質量のモノを胃に送り込まなければならぬ、という使命感で米を炊いて、レトルトのハヤシライスをかけて食べた。野菜とお湯とコンソメで作ったスープも少し飲んだ。途中で吐き出すこともなく食べきれたので少し安心する。母からは水分、塩分、タンパク質、とメールが送られてくる。タンパク質、と思ってチーズを齧るけれど私はチーズに何が含まれているのかよくわかっていない。とりあえずチーズってなんか体にいいもんだ、と思って食べればそのようになって、今度は食べても空腹が紛れないために、甘いものを食べれば塩辛いもの、塩辛いものを食べれば甘いもの、と、バランスの取れないシーソーのようにごく少量ずついろんなものを口に入れるが、やっぱりそれじゃいけない気がして歯磨きで強制的に中断をした。

 

体はずっとだるくて、力はあまり入らないけど痺れはほとんどなくなっていたのでまた夜中まで起きていた。深夜を超えて丑三つ時に近づいて、慢性的な空腹がまたきゅうきゅうと鳴きはじめ、昨日空腹のまま寝たからあんなことになったのかもしれない。いや、夜遅くにうどんを入れてすぐに寝たからあんなことになったのかもしれない。さあ、どっちだ、とセルフのクイズタイムに突入、答え、わからないけどそうめんを茹でて半玉だけにゅうめんにして食べると程よく胃も満足をしてくれたのでほっとした。そうして、今夜はちゃんと服を着て、髪も乾かして、と布団に入ったのが午前4時前のこと。明日は正常な具合で起きられるだろうか、という不安を抱えながらも眠りについた、9月3日の丸々一日の体調不良の記録。