お前はすでに死んでいた

奥歯の銀歯が詰め物ごとゴロリと取れて、大きな穴が開きました。歯医者には3年ぶりに行きました。診察をしてもらって、レントゲンを撮って、虫歯がたくさんあるので治療が必要です。までは想像していたのだけれど、上に二本親知らずが生えているので抜きましょう。この歯とこの歯は神経を抜いてありますね。驚きの爆弾が二発、どん、どんと。半分以上埋まっている歯があるなあ、と思ってはいたけれどまさかお前が巷で噂の親知らずという奴だったとは。あと神経抜いてあるって何。覚えがない。治療はしたけど神経を抜かれた覚えはない。私の知らない間に二本の歯がすでに死んでいた。もしくは私が話を聞いていなかったのか。時折ある、病院だとか歯医者さんだとか、先生、に対峙する場所に行くと心が浮足立って、聞こうと思っていたこともなかなか聞けないし帰り道でわんさか疑問が湧いてくる結果になる、軽い心の金縛り。

 

そうことで、歯医者通いが始まりまして。週に2回通う。麻酔を刺されて歯を削られてなんやかや。矯正の相談にも行くことになりました。麻酔を打つと本当に感覚がなくなるんだなあ、と数年ぶりに味わってもまた新鮮に不思議な感じがして、唇をぶにぶにと噛んだり舐めたりして帰る。唇をうまく閉じられないような気がして夕飯のカレーうどんが上手に食べられなかった。通っている歯医者には男の先生が一人と女医っぽい白衣の女の先生が一人と助手っぽい女の人たちがいて、治療をするのは男の先生。気だるげでいつも煙草のにおいがするけれど目を見て話してくれる。女医っぽい人は胸元バーンミニスカどーん眼鏡に巻き髪ざばーんという風でザ・女医を体現しているため目のやり場に困るけどこないだ直視してみたら案外顔面の施しは地味に抑えていて逆に、逆に驚いた。そんなもんだからまあ、個性的な感じがするけれど目を閉じて麻酔の効くのを待っている間にもそういった皆さんが頭の上で左のC7がうんたら、これは駄目だな、次回はここをやるよ、等々記号のような会話を投げ合っているので異世界に連れてこられた宇宙人のような心持ちです。

 

歯医者通い6回目、左上の親知らずを抜きました。麻酔を4回も打って体を騙します。こんなに頻繁に麻酔を打って大丈夫なものなのか。ともあれ麻酔が効いたら、すぐ抜きはじめ。麻酔を打ってるけど抜かれる、と思うと恐怖が痛みになるようで、自分の脳もあまり信用ができない。麻酔を打ってるけど麻酔の効いていない唇を思いっきり引っ張るのでそれが痛い。叫ぶほど痛んだらどうしようドキドキ、としていた数分のうちに私の一番奥の歯は引っこ抜かれていました。こんなに短時間なのか。こんなに力づくなのか。驚きがたくさんです。さてさて、これから私の口内に何が待ち受けているのか、こうご期待。できない、恐怖と不安だらけである。